
16.09.2025 by Dr. Chiara Baldini, Aileen Sammler
NETZSCH分析装置による切削油剤の熱的・レオロジー・トライボロジー特性評価
自動車産業、航空機製造、精密機械部品の加工など、さまざまな分野において、切削油剤は熱による損傷の防止や複雑な製造プロセスの安定稼働に不可欠な役割を担っています。切削油剤の熱的特性、レオロジー特性、トライボロジー特性は、プロセスの安定性と生産性を最適化するうえで重要です。本稿では、NETZSCHの分析装置がどのようにこれらの評価に貢献するかをご紹介します。
現在、金属加工油剤(MWF:Metalworking Fluids)は、現代の加工プロセスにおいて欠かせない存在です。工具寿命の延長、表面品質の向上、加工効率の改善に加え、効果的な熱管理を実現します。
近年、加工プロセスは高速化・高精度化が進んでおり、こうした環境下では切削油剤の熱的・レオロジー・トライボロジー特性の理解が、プロセスの安定性と生産性の向上に不可欠となっています。
最近、MDPIの学術誌『Lubricants』に掲載された研究では、切削油と水系金属加工油剤を対象に、加工環境を模擬した条件下で比較評価が行われました。本研究は、金属切削における油剤の配合設計、潤滑性能、熱拡散特性に関する実用的な知見の提供を目的としています。
NETZSCHの熱分析・レオロジーソリューションによる多角的評価
本研究では、市販されている12種類の金属加工油剤を対象に、NETZSCH-Gerätebau GmbHの高精度装置を用いて評価を行いました。
これらの試験は、せん断、接触圧力、熱負荷といった実際の加工プロセスで発生するストレスを忠実に再現するよう設計されており、各油剤の特性を総合的に評価することが可能です。
レオロジー測定は、NETZSCHの回転型レオメーター「 Kinexus Pro+」で実施されました。
その結果、水系切削油剤はせん断速度の増加に伴い粘度が低下するシアシニング挙動を示しました。この特性により、変化の大きい高速加工において優れた適応性を発揮します。一方、切削油はよりニュートン流体に近い挙動を示し、せん断条件が変化しても粘度が安定しているため、定常加工や精密仕上げに適しています。
トライボロジー特性は、同じKinexusプラットフォームに搭載されたトライボセルを用いて評価されました。その結果、切削油は混合潤滑および流体潤滑領域において、特に高温条件下で優れた潤滑性能を示しました。一方、水系油剤は広い速度域および接触圧力範囲において安定した摩擦特性を示し、さまざまな加工条件に対応できる汎用性を有しています。
摩擦係数(COF)の測定からも追加的な知見が得られました。切削油は高温・高荷重条件下でより大きな摩擦低減効果を示す一方、水系クーラントはより安定した摩擦係数を維持し、多様な加工環境において信頼性の高い性能を示しました。
金属加工油剤の熱特性は、複数のNETZSCH装置を用いて評価されました。
DSC 204 F1 Phoenix®により、比熱容量や相転移が測定され、水系油剤では約0℃付近における明確な固液相転移が確認されました。これは低温保管やクライオ加工などの用途において重要な知見です。
TG 209 F1 Libra®®による熱重量分析では、切削油が水系油剤に比べて高温で分解し、熱的安定性に優れていることが確認されました。これは長時間加工や高温環境において有利です。
さらに、LFA 467HyperFlash による測定では、水系金属加工油剤が熱拡散率および熱伝導率の両方において切削油を上回る結果が得られました。優れた熱伝達性能は、加工中の温度制御や工具・部品の熱損傷防止において重要な要素となります。

機関間連携による共同研究
本研究は、NETZSCH-Gerätebau GmbHとハノーファー大学(Leibniz University of Hannover)との緊密な共同研究によって実施されました。
NETZSCHの共著者は、熱分析およびレオロジー評価に関する専門知識を提供し、堅牢な評価手法とデータ解釈フレームワークの構築に貢献しました。学術研究と産業用分析装置の融合により、金属加工におけるクーラント特性および潤滑戦略の包括的な比較評価が可能となりました。
本研究は、加工用流体の選定、クーラント開発、切削プロセスのシミュレーションに携わる技術者・研究者にとって、有用なデータセットと手法の指針を提供します。
詳細な手法、データおよび結果については、以下のオープンアクセス論文をご参照ください:
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