グレーの円形ベース上に置かれた質感のあるコバルト酸カルシウムセラミック試料。

26.08.2025 by Dr. Chiara Baldini, Aileen Sammler

ナノリボンセラミックスによる熱電性能の向上 — 高性能カルシウムコバルタイトへの新たなアプローチ

エネルギーの効率的利用や持続可能な技術の進展は、現代における重要なテーマの一つです。熱を直接電気エネルギーに変換できる材料、いわゆる熱電材料は、こうした背景から注目を集めています。特にカルシウムコバルタイトをベースとしたセラミックスは、高温耐性に優れ、機械的にも安定で、高い性能を示す有望な材料として知られています。

高温用熱電材料の分野では、多結晶セラミックスにおいて異方性を有する微細構造を形成することが、電気伝導率を向上させつつ熱伝導を抑制するための重要な手法とされています。

では、これらの材料をさらに高性能化するにはどうすればよいのでしょうか。近年、ある研究チームがこれらの特性を大幅に向上させる全く新しいアプローチを開発し、よりクリーンなエネルギー生成に向けた重要な一歩を示しました。

米国セラミックス学会誌(Journal of the American Ceramic Society)に掲載された最新の研究「電界紡糸と二重スパークプラズマテクスチャリングによる高性能カルシウムコバルタイトナノリボンセラミックス(High-performance thermoelectric calcium cobaltite nanoribbon ceramic via electrospinning and dual spark plasma texturing)」では、この課題に対する革新的なアプローチが紹介されています。

ナノリボンから高性能セラミックスへ

ハノーファー大学(Leibniz University Hannover)とテクニオン・イスラエル工科大学(Technion – Israel Institute of Technology)の研究チームは、エレクトロスピニングと、スパークプラズマ焼結(SPS)およびエッジフリースパークプラズマテクスチャリング(SPT)を組み合わせることに成功しました。このプロセスは、以前のブログでも紹介されており、CCO粉末ベースのセラミックスに適用されていました。

本研究の大きな革新点は、エレクトロスピニングにより作製したナノリボンを出発原料として用い、高配向なカルシウムコバルタイト(Ca₃Co₄O₉、CCO)セラミックスを形成した点にあります。

これらの一次元前駆体は本質的に異方性を有しており、すでに配向した結晶構造を持っています。これをSPSとSPTを組み合わせた手法で焼結・テクスチャリングすることで、得られたコバルタイトは、緻密でレンガ積み状の微細構造を形成し、面内方向の電荷輸送に適した高い配向性を実現します。また、配向した粒界におけるフォノン散乱により、熱伝導率の低減も達成されています。

この有望な熱電材料は、1073 KにおいてZT=0.53を達成し、多結晶CCOとしては報告されている中でも最高レベルの値の一つとなっています。

NETZSCH熱分析装置による高精度な熱電特性評価

本研究では、NETZSCH Analyzing & Testingのラボが重要な測定を担当しました。LFA 467HT HyperFlash®レーザーフラッシュ装置を用いた熱拡散率の測定、およびDSC 404 F1 Pegasus® 示差走査熱量計による比熱容量(Cp)の測定が実施されました。

これらのデータにより、熱伝導率(λ)およびZT値を高精度に算出することが可能となり、ナノ構造化が熱輸送特性に与える影響を直接的に評価することができました。

本研究は、あらかじめ構造制御された異方性セラミックス材料が、酸化物系材料の熱電特性を大きく向上させる可能性を示しています。革新的な合成技術と高精度な熱特性評価の融合により、安定かつ高性能なセラミックスを基盤とした新たなエネルギーハーベスティング技術の実現が期待されます。

謝辞

本研究は、ドイツ・ハノーファー大学(Leibniz University Hannover)物理化学・電気化学研究所と、イスラエル・テクニオン(Technion – Israel Institute of Technology, ハイファ)ウルフソン化学工学科、ならびにNancy & Stephan Grand Technion Energy Program(GTEP)との共同研究として実施され、NETZSCH Analyzing & Testingの協力のもとで行われました。

当社は、熱分析に関する専門知識および装置の提供を通じて、熱物性の高精度評価に貢献できたことを大変嬉しく思います。

本論文のオープンアクセス出版は、Projekt DEALの支援および調整により実現されました。

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