Termica Neo ソフトウェアを使用した、化学プロセスにおけるThermal Simulations の変換率を示す3D温度分布モデル。

07.02.2024 by Dr. Elena Moukhina, Aileen Sammler

Termica Neoのご紹介:産業用途の熱シミュレーションのための新しいNETZSCHソフトウェア

新しいソフトウェア Termica Neo は、実験室レベルのプロセスを簡単かつ高精度に解析・シミュレーションできるだけでなく、キログラムやトン単位といった大規模な産業プロセスの挙動も予測できます。これにより、製品の最高の品質と安全性を維持することが可能になります。

高度な解析と安全性を重視した化学業界向け熱シミュレーションソフトウェア「Termica Neo」のロゴ。

化学工業における温度依存プロセスのシミュレーションでは、反応媒体内に生じる温度勾配が大きくなる場合があり、これを考慮する必要があります。

たとえば硬化結晶化といったプロセスでは、温度勾配が製品品質に影響を与えます。また、強い発熱反応を伴う材料では、温度勾配が暴走反応の安全性にも影響します。

私たちはこのたび、新しいソフトウェアNETZSCH Termica Neoをご紹介できることを誇りに思います。本ソフトウェアは、ICTAC* が推奨するすべての速度論解析手法を採用しており、NETZSCHソフトウェア Kinetics Neoと完全な互換性を備えています。さらに、モデルフリー法およびモデルベース法の両方に対応し、独立反応・競合反応・逐次反応などを含む複雑な多段階反応の解析にも対応しています。
 

* ICTAC(International Confederation of National or Regional Thermal Analysis and Calorimetry Societies)
各国・地域の熱分析および熱量測定に関する学会の国際連合。国際会議の開催や科学委員会の活動を通じて、熱分析・熱量測定分野における国際的な理解と協力の促進を目的としています。(詳細:ictac.org)

参考文献
[1] Vyazovkin S. ほか, ICTAC Kinetics Committee recommendations for analysis of multi-step kinetics, Thermochimica Acta, Vol.689, 2020,  178597

 

暴走反応や爆発を防ぐための大規模工業プロセスのシミュレーション

示差走査熱量測定(DSC)や、熱重量測定(TGA)加速速度熱量計(ARC®®)などの熱分析手法で測定される数ミリグラム程度の小さな試料では、温度勾配はほとんど生じません。そのため、これらの測定データは反応速度論解析に適しています。
反応速度論解析ソフトウェアでは、試料内部に温度勾配が存在しないという条件のもとで、化学反応速度を2つの極限ケースとしてシミュレーションできます。1つ目は、試料が無限大の熱伝導率を持ち、かつ周囲環境との熱伝達も無限大である場合で、制御された外部環境と完全に熱平衡を保つケースです。
2つ目は、熱損失が一切ない純粋な断熱加熱のケースです。

しかし実際の化学工業プロセスや、高エネルギー材料の保管・輸送においては、熱輸送や熱損失はこれら2つの極限条件の中間的な状態にあります。そのため、安全性を確保したり、望ましい製品品質を実現したりするためには、反応体積内で温度が一定でない条件を考慮したシミュレーションを行う必要があります。
このようなシミュレーションの主な産業用途は、製品品質の最適化安全性の確保です。

ポリマー産業やセラミックス産業では、温度が高い領域ほど反応速度が速くなるため、材料の位置(座標)によって物理特性が異なる場合があります。これは焼結や硬化の際の収縮として現れ、機械的応力を生じさせ、最終製品の品質に影響を与えます。

また、化学工業における高エネルギー材料の保管や輸送を予測する場合にも、反応媒体内の温度勾配は重要であり、これを考慮する必要があります。

強い発熱反応では、温度が高く反応速度の速い領域ほど発熱量が増加し、自己加熱がより強く進みます。その結果、こうした局所領域が暴走反応や熱爆発の発生起点となるホットスポットになる可能性があります。

一方、発熱量が比較的小さい反応でも、温度の高い領域では反応速度や反応転化率が高くなります。これにより、材料の位置によって物理的・化学的特性が異なる状態が生じます。こうした差は、熱容量、熱伝導率、あるいは反応物濃度などの分布として現れます。

 

 

Termica Neoによる複雑な化学プロセスのシミュレーション

既存の多くの FEM(有限要素法)ソフトウェアは熱伝達の計算は可能ですが、熱効果を伴う複雑な多段階化学反応の取り扱いには限界があります。一般的には、単一の速度式を用いたモデルフリー型の速度論、あるいはすべての速度パラメータが既知である1~2段階の反応モデル程度にしか対応していません。

新しい熱シミュレーションソフトウェアTermica Neoは、Kinetics Neo のプロジェクトから化学パラメータや反応式を入力データとして直接取り込む構成になっています。NETZSCH の Kinetics Neoソフトウェアと完全に互換性があり、モデルフリー法モデルベース法の両方に対応しています。特にモデルベース法では、個々の反応ステップの数や相互関係に制限がなく、独立反応・競合反応・逐次反応など、さまざまな反応ネットワークを扱うことが可能です。

Termica Neo は Kinetics Neo からすべての速度論パラメータを取り込み、さらに材料ライブラリから取得した 温度依存の物性値(熱伝導率や、反応物・生成物の比熱容量など)も利用します。

また、追加の入力パラメータとして、容器(リアクター)に関する情報も設定できます。たとえば、リアクターの各面ごとに容器の材質や厚さを個別に設定できるほか、周囲媒体も面ごとに異なる条件を指定できます(例:上面は空気、側面は水、底面は地面など)。さらに、周囲温度のプロファイルについても、ジオメトリの各面ごとに異なる条件を設定することが可能です。



 

円筒容器内でのエポキシ樹脂硬化の温度分布図。130分後の自己発熱によるホットスポットを赤色で示す。
図1: 円筒形容器内で硬化しているエポキシの縦断面における温度分布(130分後)。周囲温度は上部 25°C、側面 100°C、底面 120°Cに設定されている。赤色の領域は、自己加熱によって生じたホットスポットを示す。

Termica Neoでできること

  • 容器内部のあらゆる位置における材料の挙動をシミュレーションできる
  • 容器内部で最高温度反応物の最大転化率いつ・どこで発生するかを特定できる
  • 容器内部の任意の時間および位置における温度・転化率・反応物濃度を求めることができる
  • 硬化、分解、結晶化の進行度を予測できる
  • 製造プロセスや保管時の熱的安全条件を評価・決定できる
断熱容器内のベークライト球体の温度-時間シミュレーション。
図2:断熱容器内の反応物 - 断熱系における温度分布のシミュレーション結果を示す。反応物は実線、容器は破線で表されている。

ソフトウェアは、温度、すべての反応物の濃度、反応速度について、時間依存および位置依存の結果を2Dおよび3D表示で提供します。
また、自己加速分解温度(SADT: Self-Accelerating Decomposition Temperature)の探索や、断熱条件および周囲環境への無限大の熱伝達を仮定したシミュレーションも実行できます。

特徴一覧:

  • 高速かつ扱いやすい操作性:ユーザーインターフェースは Kinetics Neo と類似
  • Kinetics Neoから反応モデルを直接取り込み:Kinetics Neo プロジェクトからモデルを取得可能(モデルフリー・モデルベースの両方に対応)
  • 体積内の任意の位置・時間における計算:
    • 温度、
    • 転化率
    • 変換率、
    • 反応物濃度、
    • 硬化・架橋反応におけるガラス転移温度(Tg)
  • 自己加速分解温度(SADT)の計算:材料・容器・周囲条件の違いにも対応
  • 容器を含むリアクター反応のシミュレーション:断熱条件にも対応

 

Termica Neo ウェビナーもご覧ください:

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