14.05.2026 by Aileen Sammler

ポリマー硬化 ― NETZSCH Termica Neoで硬化プロセスを可視化

本記事は、連載シリーズ「NETZSCH Termica Neoが切り拓く熱分析の新次元 ― 工業スケールの化学反応を対象とした熱シミュレーションソフトウェア」の第3回です。
本シリーズの主なテーマ:速度論モデルから実プロセスへの展開; スケールアップとプロセス安全性;ポリマーの硬化; 熱可塑性樹脂の結晶化(PA12); セラミックスの焼結。

本記事では、NETZSCH Termica Neo を用いてポリマーの硬化反応をどのようにシミュレーションし、製品内部で進行する反応や温度分布を可視化できるのかをご紹介します。
Termica Neoは、熱分析データと反応速度論モデルを組み合わせることで、実際の製造条件に近い環境下での反応挙動を予測し、製品開発や工程設計の最適化を支援します。 

高度な解析と安全性を重視した化学業界向け熱シミュレーションソフトウェア「Termica Neo」のロゴ。

すべてのポリマーには、2つの“物語”があります。
ひとつはDSC曲線上に現れるもの、そしてもうひとつは実際の成形品内部に隠れているものです。

小さな試料では、硬化は完璧に進行しているように見えます。しかし実際の部品内部では、熱が蓄積し、反応フロントが移動し、さらにはガラス化(vitrification)によって、反応が完了する前に停止してしまうことがあります。 NETZSCH Termica Neoは、この“見えない世界”を可視化します。

このソフトウェアは、反応速度論データを、温度・反応率・反応速度の3Dマップへと変換します。

これにより、樹脂硬化の挙動を、単なる1本の曲線としてではなく、空間的・時間的な変化として把握できるようになります。

NETZSCH Termica Neo ソフトウェアによるAIBN分解の3次元温度シミュレーション。時間および空間に伴うホットスポット形成を示しています。

NETZSCH Termica Neoソフトウェアを使用した、AIBN分解の3D温度シミュレーション。
図:96分後および176分後における温度場の3Dシミュレーション。硬化勾配を示したカラー断面図。

実験室の曲線から実際の空間挙動へ

ラボでは、試料全体が同一温度条件にある小さなサンプルを用いて反応速度論を測定します。
一方、生産現場では、積層材、金型、接着層などの実際の形状を持つ部品内部に温度勾配が存在します。

その間にある課題は、材料損傷につながる過度なホットスポットを発生させることなく、積層材・金型・接着層の中心部がいつ表面温度に追従するのかを、どのように予測するかという点にあります。

Termica Neoソフトウェアは、このギャップを埋めます。
 Kinetics Neoのデータ ― モデルフリー解析、モデルベース解析、単段階反応、多段階反応、自己触媒型反応、拡散律速型反応など ― を取り込み、それを実際の部品形状へ適用することが可能です。

定義

  • 材料パラメータ:比熱容量、密度、熱伝導率
  • 形状:プレート、円柱、球体、またはカスタム回転体
  • 境界条件:伝熱、対流、放射率
  • 温度プログラム:等温、動的、ステップ等温、変調
96分と176分におけるポリマー硬化の温度場の3Dシミュレーション(熱勾配と熱分布を示す)。
図:選択可能な標準容器を表示したジオメトリ設定インターフェース。

硬化中に何が起こるのか?

架橋反応が開始すると、発生した反応熱(発熱)によって局所的な温度が上昇します。

外側の層は周囲温度により早く到達する一方、内部は最初は低温のまま維持され、その後、加速する反応によって加熱され、ホットスポットが形成されます。さらに、ガラス転移温度(Tg)が試料温度を上回ると、分子運動性が低下し、拡散律速によって反応速度が減速します。

Termica Neo は、これらの相互に関連する現象を同時に捉えます。

温度 ↔ 化学律速下での反応 ↔ 拡散律速下での反応

その結果、部品内部を進行していく硬化フロントを“生きたモデル”として可視化することができます。

NETZSCH Termica Neoソフトウェアで熱シミュレーション用に選択可能な標準コンテナ形状を示す形状設定インターフェース。
図:エポキシ硬化中における温度および反応率の変化を示したヒートマップのシーケンス。

事例紹介:下面加熱によるエポキシ円柱の硬化

単純なエポキシ円柱の硬化シミュレーションにより、実測だけでは得ることのできない情報を把握することができます。:

  • 反応フロントが円柱高さ方向に沿って上方へ進行する
  • 中心軸付近では反応率の進行が遅れ、冷却もゆっくり進む
  • 表面では過硬化、内部では硬化不足が同時に発生する

Termica Neo 上で円柱各面の昇温プロファイルや保持時間を調整することで、エンジニアは実際の成形試験を行う前に、これらの勾配を解消することが可能です。

エポキシ硬化の進行に伴う反応フロントおよび温度勾配を示した、円柱断面の反応率ヒートマップ。

円柱断面における反応前線と温度勾配を伴うエポキシ硬化の進行を示す転化率ヒートマップ。
図:硬化中のエポキシ円柱における反応率分布マップ。

硬化プロセスから予測制御へ

硬化プロセスは、もはや“見えない領域”ではありません。
NETZSCH Termica Neo ソフトウェアを使用することで、ラボスケールから工業スケールまでさまざまな条件をシミュレーションし、新しい樹脂系、硬化サイクル、形状や体積の違いを検証することで、以下の項目を高精度に予測できます。:

  • ホットスポットの位置および温度
  • 硬化度(α)の分布
  • 局所的なガラス転移温度(Tg)に依存した拡散律速反応の発生
  • エネルギー投入を最小限に抑えた最適プロセスウィンドウ

これにより、試行錯誤に頼ることなく、最小限のエネルギー消費で高品質かつ効率的なプロセスを実現できます。

Termica Neoの特長

  • Kinetics Neo からの反応速度論データの直接インポート
  • 温度・反応率・反応速度の完全な2D/3D可視化
  • 自己触媒型および拡散律速型硬化反応のシミュレーション
  • 複合材料、接着剤、コーティング向けの形状依存最適化
  • 試作・検証回数の削減 | プロセス信頼性の向上 | エネルギーコスト低減

本ブログシリーズについて

本記事は、NETZSCHシリーズ「Termica Neoによる熱分析の新次元 ― 工業スケールにおける化学反応熱シミュレーションソフトウェア」の一部として掲載されています。

これまでに公開された記事:(以下リンク参照)


今後公開予定の記事:熱可塑性樹脂の結晶化(PA12)、セラミックス焼結

これらの記事では、同じ3D可視化アプローチを冷却および緻密化プロセスへ応用します。ぜひご期待ください。

硬化プロセスを“見える化”

 NETZSCH Termica Neo をぜひご覧ください。
データ上だけではなく、実際の部品内部で硬化がどのように進行しているのかを可視化できます。
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